大谷戸(田奈町)の庚申塔・馬頭観音

東急田園都市線田奈駅から榎が丘のほうへ坂を上りきった丘の上に珍しい庚申塔があります。田奈町22番地の一角です。



椎の木地蔵尊から続く旧鎌倉路の尾根道沿いなのですが、普通に歩いていてその存在に気づく人は少ないと思います。

実際私も、この辺りにそういう物があるという話は前々から知っていたのですが、見つけたのは恩田メモを書き始めて真面目に探索するようになってからのことでした。しかも結構いろいろ歩き回ってやっと見つけました。



住宅街の建物の間に、家を建てるにしては狭い垣根で囲まれた空間があります。



ここです。

この奥に入ると高い擁壁の上で眺望が開け、田奈駅周辺の町並みが一望できます。



その見晴らしに向くように稲荷の鳥居があります。



本来はこちら側に参道があったものと推測しますが、田奈町周辺の土地区画整理事業によって切り崩され参道を失ったのだと思います。

境内には稲荷社の他、庚申塔と馬頭観音があります。



ここでは石碑石仏カテゴリということでこの庚申塔と馬頭観音を取り上げます。稲荷社に関連するものについては別途神社のカテゴリに載せることにします。


まずは庚申塔です。



庚申塔(五輪塔形式)

空輪正面: [梵字キャ]
風輪正面: [梵字カ]
火輪正面: [梵字ラ] [梵字バ]
水輪正面: [梵字ア]
地輪正面:
     于時慶安三庚寅暦
     奉造立庚申待為供養五輪塔
     婆[一?][基?]願望悉地成就祈所
     霜月吉日施主敬白
     武刕都築郡恩田村
地輪左側面: (名4名)
地輪右側面: (名4名)



▲ 地輪正面


▲ 地輪側面(名4名と思われるが判読できない)


江戸初期の慶安3年(1650年)の庚申塔です。私の知る限り旧恩田村エリアにある庚申塔の中で最も古いものです。もしかすると恩田で最初に作られた庚申塔かもしれません。

この庚申塔の何が珍しいかというと五輪塔であることです。恩田にある庚申塔の多くは全国的にもテンプレート化している青面金剛を彫ったものが多いですが、ここは私の知る限り恩田で唯一の五輪塔形式の庚申塔です。全国的にも珍しいもののようで、横浜市地域有形民俗文化財に指定されています。



▲ 横浜市地域有形民俗文化財の案内板


庚申塔としての特異性もさることながら、五輪塔として見ても少々特異な点があります。まず形状として、空輪が球と円錐を組み合わせた形であったり、火輪の笠が非常に厚みがあったり、水輪が扁平していたりと、かなり大胆にデフォルメしたデザインになっています。つぎに刻銘として、五輪塔は一般的に空輪・風輪・火輪・水輪・地輪にそれぞれ「キャ」・「カ」・「ラ」・「バ」・「ア」の梵字をひとつずつ刻みますが、この五輪塔では火輪に「ラ」と「バ」を刻み、水輪に「ア」を刻み、地輪には梵字を刻まずに庚申塔としての文を刻んでいます。


稲荷社の裏に馬頭観音があります。


馬頭観音

正面右: 昭和二年十月
正面中央: 馬頭観世音
正面左: (氏名1名)



昭和2年(1927年)のものです。

この周辺の馬頭観音は土地区画整理事業の際に椎の木地蔵尊に移されたものが多いですが、ここは稲荷の境内だったためか、そのまま残されたようです。

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